2011/01/05

「内向き志向」について

昨年は、若者の「内向き志向」がメディアで頻繁に取り上げられた年だった。
若い社員が海外勤務を希望しない、若い研究者が海外に出たがらない、という現象について、よく報じられた。

研究者についてみると、海外滞在者(30日以上)の数は、実は2000年がピークで(7,674人)、そこからほぼ一直線で減少傾向をたどり、2009年には3,739人まで減少している。

このような事態に、文部科学省その他関連機関は大きな懸念を示している。
ノーベル賞を受賞した根岸教授も、若者よ海外に出でよ、と繰り返していた。

このような若手研究者の「内向き志向」の原因としては、帰国時のポジションの不安、経済的問題、日本の居心地の良さのほか、近年の日本の研究の水準の向上・研究環境の改善が挙げられることが多い。
インターネットを通して情報が得やすくなったこと、国際共同研究を行いやすくなったことも挙げられるだろう。

だが、この「内向き志向」の原因の総合的な分析はまだ見たことがない。
もちろん、そうした分析を行うことは大変難しいが、まずそれがきちんとなされなければ対策をとるのも難しいはずだ。

私は、これまであまり挙げられてこなかった観点として、海外経験のステータスの変化があると思っている。
1980年代あるいは1990年代までは、グローバル化の進展が部分的であって、海外に出ることに対してまだステータスが与えられていた。
しかし、2000年代になると、海外に出るのが普通になりすぎて、もはや海外に出ることに全くステータスはない。
多くの若者はステータスを求める。ステータスが与えられず、居心地も悪いなら、海外に出ようとする者が増えるはずはない。

私の意見としては、上記のような社会学的な観点を重視した考察を行わない限り、「内向き志向」問題の本質はつかめない、ということだ。

付け加えるならば、海外に出ることのリスク・テークの問題も考えるべきだ。
リスクをとって海外に出よ、という人は多い。
だが、数年前まで日本では「安心・安全」が金科玉条になっていた感がある。「安心・安全」を至上の価値としてすり込まれて育ってきた若者に、いまになってリスクをとれ、というのは少し酷というか、矛盾している気がするのだが、どうだろうか。
日本には「安心・安全」を極度に重視する言説が存在し、それにみな同調していたのではないか。このあたりもきちんと省みないと、問題の本質を捉えることができないように思う。

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