2012/08/02

年報 科学・技術・社会への投稿

最近発刊された『年報 科学・技術・社会』21号に、以前投稿した「科学的知見と政策形成」が掲載された。

内容は、政策形成における科学のあり方に関して、海外の政策現場でこれまでどのような検討がなされてきたかを紹介し、そのうえで、日本における今後の検討の方向性に関する展望を示し、その検討の過程でSTSが重要な役割を果たし得ることに触れたものである。

本稿の冒頭には、10年ほど前から感じていたSTSの方向性に関する懸念を書いておいた。すなわち、STSが1990年代以降急速に政策志向を強めたということである。

確かにSTSのような学問が科学技術政策に寄与することは、納税者の観点からは望ましいといえよう。
だが、それは同時に、STSがその本来の問いから逸れた問題に重点を置くようになってきたことを意味する。

STSは、科学技術と人間や社会との関わりについて本来問うていたのであり、政策はそのほんの一部だった。
STSが政策志向を強めれば、それは為政者から好まれ、資金も潤沢になるであろう。
だが、政策志向のSTSは、以前のSTSよりも明らかに底の浅い学問になっている。

時代の流れといえば仕方のないことかもしれない。
あらゆる学問において、そして社会において、本質的な問いが軽視される時代になっている。

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