2011/11/07

ペンシルバニア州立大学STSプログラムの廃止

先週末は、米国クリーブランドで開かれたSociety for Social Studies of Science年次大会に参加してきた。
自分自身の発表はスムーズに終わり、ある程度の関心も持ってもらえたようであるが、今回の年次大会で最も印象深かったのは、ペンシルバニア州立大学のSTSプログラムの廃止とからめてSTSの将来を議論したセッションであった。

ペンシルバニア州立大学のSTSプログラムは、1960年代にスタートした比較的歴史のあるプログラムであるが、間もなく閉鎖されるようだ。
同大学は、米国の他の大学同様、厳しさを増す財政状況に置かれている。このため、STSプログラムなどいくつかのプログラムの閉鎖が昨年の同大学評議会で提言されたという。

同大学のSTSプログラムの閉鎖の背景には、何らかの学内政治的な要因があったという指摘もあった。
一般的にSTSプログラムは、理工系学部の関係者の反発を招きかねない側面をもっている。反テクノロジー的な思想背景をもっているという誤解をもたれたり、地球温暖化問題の重要性をことさらに強調しているように受け止められたりする傾向があるからだ。
ペンシルバニア州立大学でも、STSプログラムに対してそうした見方が存在したのかもしれない。

また、大学が厳しい財政状況にあるときは、学際分野は特に厳しい立場にたたされるという現実がある。
大学の執行部にとっては、やはり伝統的学問分野こそが中核事業である。したがって、リソースが逼迫しているときに学際分野が伝統的学問分野と対立関係にあるようだと、学際分野の存立が脅かされるような事態になりかねないのである。
Society for Social Studies of Scienceの次期会長のTrevor Pinch氏も、STSプログラムの発展のためには理工系学部の長期的な支持が不可欠であることを強調していた。

だが、STSはそもそも科学技術を批判的に、というと語弊があるが、クリティカルに見るところからはじまった学問分野である。
STSが科学技術にすり寄る学問になっては誠に不健全であるというしかない。その部分の自覚はやはり求められるであろう。

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