2011/07/18

COE型ファンドと研究者ネットワーク

今日は、9月11日~14日に開かれる予定の機械学会の年次大会の予稿集の原稿を提出した。
今年は大震災の影響もあり、年次大会の準備が遅れているようで、締切は約2か月前の7月15日だった。締切から3日遅れてしまった。

機械学会での発表の内容は、一言でいえば、日本で近年急速に増えてきたCOE型ファンドの研究者ネットワークに対する影響である。
COE型ファンドについては、世界的水準の研究成果の創出や人材育成などの面において一定の成果を挙げているという評価もあるが、さまざまな批判もきかれる。
たとえば、COE型ファンド、あるいは競争的資金一般が有力大学に過度に集中していること、そしてその結果、国内における層の厚い研究能力の形成が阻害されているという見方がある。
また、COE型ファンドが国内の研究者ネットワークに複雑な影響を与えるのではないかという懸念が示されることもある。

COE型ファンドの研究者ネットワークに対する影響は、どうやら実際に存在する、というのが機械学会での発表の内容である。
ある研究者がCOE型ファンドを受けた際、他の研究者がテーマを変えて別のCOE型ファンドを受けようとするためにネットワークの分断が生じることがあるようである。
大きなCOE型ファンドを獲得した研究者の足を他の研究者が引っ張るようなことも実際にあるようだ。
さらには、COE型ファンドを受けるとエフォート管理の問題でネットワークが分断されてしまうこともあることも指摘されている。

最近は、研究者ネットワークの形成を促進するためのNOE(Network of Excellence)型ファンドの拡充を求める声もある。
既存のファンドでも、JSTのCRESTやJSPSのFIRSTといったファンドはある程度NOE型の性質を備えているようにみえる。
こうしたファンドを拡充するということだが、その場合、見かけだけの研究者ネットワーク形成にならないことが重要であるという声は多い。

見かけだけの連携関係は、共著論文の出版等に際してもみられるように思う。
連携関係を作ることがそれ自身目的となって、肝心の研究の中身がいい加減なものになってしまっては、まさに本末転倒だと思う。
実は、そのような連携関係優先主義は学問の阻害要因の一つなのではないかと個人的には強く感じている。

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