2011/05/07

NRCの歴史

最近、全米研究評議会(National Research Council、NRC)の歴史について少し調べてみた。
NRCは、全米科学アカデミー(NAS)、全米工学アカデミー(NAE)、医学院(IOM)とともに全米アカデミーズ(National Academies)を構成しており、NAS・NAE・IOMの実働部隊(Operating Arm)として位置づけられているが、その実態については日本ではあまり広く知られていないのではないかと思う。

NRCは、第一次世界大戦中の1916年9月、天文学者ジョージ・へール(George E. Hale)の主導により、NASにより設置された。
第一次世界大戦が終わるまでは、ほとんど軍事研究プログラムの推進だけを行っていたが、1918年5月の大統領令によりNRC組織の常設化が決まると、次第により幅広いミッションを担うようになった。

興味深いのは、NASとNRCとの間の関係がなかなか定まらなかったことである。
設置当初は、へールはNRCをNASの一委員会として捉えていたし、一方で当時のNAS会長ウィリアム・ウェルチ(William H. Welch)はNRCを独立の存在と考えていた。
その後1924年に、NASはNRCとの関係について検討する委員会を設置し、議論の末、NASがNRCの運営の最終的な管理権限を持つことを確認した。

だが、その後もNASとNRCとの間には慢性的な緊張関係が続いた。
NRCはNASの保守性を嫌い、NASはNRCが産業界や政府との緊密な協力関係を志向することに懸念をもっていた。

その後、1950年にNAS会長に就任したデトレフ・ブロンク(Detlev W. Bronk)の主導により、NAS会長とNRC議長を兼務の職とすること、NAS理事会とNRC理事会を統合することが実現する方向となり、NASとNRCとの関係が次第に整理されてきた。

米国のアカデミーの体制は全般的にかなり合理性が高いように見えるが、その背景にはこのような歴史的な検討の蓄積がある。

なお、上記のようなNRCの歴史についての情報源としては、

Rexmond C. Cochrane, The National Academy of Sciences: The First Hundred Years, 1863-1963 (National Academies, 1978)

が現時点では最も詳しいのではないかと考えられる。

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