2011/02/07

宇宙開発特集号への寄稿

岩波書店『科学』の2月号は、宇宙開発の特集号である。

http://www.iwanami.co.jp/kagaku/KaMo201102.html

全体として、宇宙科学と宇宙の平和利用について焦点を当てた特集になっている。
興味深いのは、JAXA関係者が宇宙科学研究所の一人だけで、あとはJAXA外の執筆者による記事が集められている点だ。
国の政策の解説のような記事では面白くないだろう、という編集者の考えがあったのだろうと思う。

私は、「宇宙利用重視政策と科学者・技術者」という文章を寄稿した。
趣旨は、これから宇宙利用を重視しようという政策が勢いを増そうとしている中で、トップダウンによる宇宙活動に偏ってしまうのは良くない、ということである。
現在、日本の宇宙開発は非常に好調だが、技術的にもう成熟したから今度は利用だ、という考え方は安易だと私は思う。
今日の宇宙技術を開発し維持するためにこれまでどれだけの技術者の情熱と献身的努力がささげられてきたかを理解できていない人の意見ではないかと思う。

宇宙開発の水準を持続的に高めていくには技術者の情熱と誇りを保つことが必要であり、そのためには技術者にある程度の自由と裁量を与えるべきだ。
納税者へのアカウンタビリティも大事だが、短期的な経済的・社会的リターンにのみ目が向いてはならないのである。

一般的に、技術開発とアカウンタビリティとの関係については、もっと深く考える必要があるのではないだろうか。
アカウンタビリティは絶対善だという観念を問い直してみるのも良いのではないかと思う。

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