2010/12/27

宇宙は何でできているのか

村山斉『宇宙は何でできているのか』を読み終えた。
現代宇宙論の入門書だ。筆者は、東京大学数物連携宇宙研究機構(IPMU)の機構長。カリフォルニア大学バークレー校の教授から2007年に帰国してIPMUに着任した物理学者である。


ベストセラーに顔を出すほど良く読まれている本で、確かに大変読みやすい。
前半はそれほど複雑でない内容を扱っていることもあり、特に楽しく読める。後半は最先端の内容を扱っている部分もあり、さすがに難しい部分もあるが、それでも読者を読み進めさせる。

これだけ読みやすく書くのは並大抵のことではない。あとがきをみると、プロのライターの力を借りたようだが、それを考慮しても筆者の文章力はすばらしい。構成といい内容のかみ砕き方といい、計算され尽くしている。

比喩も巧みだ。例えば、何も無い空間からエネルギーを借りてきてすぐ後に返すことで光子の交換が行われることを「正規の手続きを経ずに会社の金庫からお金を借りている」と喩えたうえで説明を展開しているところなどは、誠にイメージがわきやすい。

様々なエピソードも散りばめられている。欧州原子核研究機関(CERN)の加速器があまりにも敏感で、いくら計算しても精度が上がらなかったとき、実は月の重力や高速鉄道TGVがかく乱要因になっていたことなども紹介されている。

IPMUはこの分野の有力な研究拠点であるが、その運営はたやすくないと聞く。現在のところパーマネントの組織ではないからだ。しかしこの分野は日本が過去にも大きな貢献をしてきた分野である。IPMUの一層の発展を期待したい。

0 件のコメント:

コメントを投稿