2010/12/14

韓国の科学技術

本日は、とある新聞社の論説委員の方と面談する機会があった。
ユネスコ科学白書2010の日本の章を執筆した関係で、その周辺の事柄についてお話しした。

先方とは、日本の科学技術政策をめぐる問題状況の基本的な認識が非常に近かった。
企業の国際競争力の弱さ、若手人材の活用失敗、基本政策の審議プロセスの貧弱、等である。

韓国の科学技術イノベーション政策についても意見交換した。
東京工業大学の細野秀雄教授による基礎研究の成果を用いて、最近、日本企業ではなくサムソン電子が画期的な液晶パネルを開発したという。

確かに韓国は、アグレッシブな科学技術イノベーション政策を展開している。
その対GDP比の総研究開発費は、2.6%(2001年)→3.2%(2007年)と推移してきたが、2012年に5.0%を目標としている。
ユネスコ科学白書でも「おそらく世界で最もイノベーションにコミットしている国」と評価された。

だが、向かうところ敵なしにも見えるサムソン電子にも死角はある、と考える人もいる。
論説委員の方と2時間ほど話した後、文部科学省の元高官の方も交え話したが、その中で出てきた話で、サムソン電子は技術のシーズを生み出すことにはほとんど関心を持っていないという見方もできるようだ。
日本をはじめとする他国から使えそうなシーズをもってきて、それをいち早く製品化することだけに資源と能力を集中しているというのである。
そのような企業戦略は、当面は成功しても長くはもたないかもしれない。
ただサムソンがいま世界の時流に乗り、大成功していることもまた事実である。
サムソンのモデルは是か非か。日本の製造業の根本的な戦略を左右する問いであろう。

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